家族、勤務先や知人に知られずに自己破産できますか。

家族に知られずに自己破産できるか。

同居している場合

 同居の家族には自己破産について説明することが望ましいと言えます。
 自己破産申立時の必要書類として、家計簿があります。
 家計簿には、基本的に同居者全員の収入と支出を記載し、その基となる資料(給与明細、保険証券等)の提出も必要となります。
 したがって、同居の家族にはこれらの資料の提供を求めることになりますので、その際に事情を説明することが望ましいと考えられます。
 なお、任意整理の場合には、家族の給与明細等は不要ですので、自分で家族に知らせないで手続を進めることも可能です。

同居していない場合

 同居していない家族については、家計簿に記載する必要がないので、基本的には知らせないまま自己破産申立てを行うことが可能です。

離婚されるおそれがある場合

 自己破産を伝えると離婚されるおそれがある場合には、妻又は夫に告げずに、自己破産を進めることもあります。
 もっとも、家計簿には、妻又は夫の収入支出を記載する必要があります。

家族が保証人になっている場合

 家族が保証人になっている場合には、保証人に請求が行きますので、その時点までには自己破産について説明しておく必要があります。

勤務先に知られずに自己破産できるか。

勤務先に借り入れがある場合

 勤務先、労働組合や共済組合に借り入れがある場合には、それらの借り入れだけをはずして自己破産申立てを行うことはできませんので、勤務先に自己破産は知られてしまいます。

勤務先に借り入れがない場合

 勤務先が自己破産を知る方法としては、官報を見ることくらいしか考えられませんが、勤務先が金融機関や税務署でもない限り、官報の存在すら知らないのではないかと思われます。

他人に知られずに自己破産できるか。

官報公告

 個人間の貸し借りの貸主であったり、自分の借り入れの保証人に対しては、自己破産申立てを知られることは避けられません。
 それ以外の人が、自己破産を知る方法として考えられるのは官報くらいです。
 しかし、一般の人が、官報を見ることは考えにくく、官報の存在すら知らないのではないかと思います。

破産者名簿

 破産手続中(破産手続開始決定から免責許可決定確定までの間)は、資格及び職業の制限があります。
 具体的には、警備員や宅地建物取引士などです。
 これらの職業に就いたり、資格を登録する際に、自己破産による職業、資格制限がないことを証明してもらう必要が出てくる場合があります。
 このような場合に、自分の本籍のある市町村で、破産手続開始決定の通知を受けていないことの証明書(身分証明書)を発行してもらうことができます。
 市町村は、身分証明書を発行する前提として、身分証明取扱事務要領などを設けて、破産者名簿を作成することになっています。
 市町村は、裁判所から通知を受けて初めて、破産者名簿を作成します。
 しかし、裁判所が市町村に通知を行うのは、破産手続開始決定時ではなく、免責許可決定がされないことが確定した時点です(平成16年11月30日民三第113号民事局長通達「戸籍事務司掌者に対する破産手続開始決定確定等の通知について」)。
 そこで、免責許可の可能性を見ると、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会が2020年に調査した範囲では、免責許可となった割合が96.85%で、免責不許可は0件とのことです(2020年破産事件及び個人再生事件記録調査)。
 また、破産者名簿は閲覧できませんし、身分証明書は基本的に本人しかとれません。
 したがって、破産者名簿については気にしなくて良いと言えます。

破産者マップ

 破産者マップは、官報を利用して、グーグルマップに破産者の住所・氏名を表示したもので、2019年3月頃にサイトが作られたときには、話題になりました。
 しかし、批判が多く、すぐにサイトは閉鎖されました。
 その後、似たようなサイトが作られたこともありましたが、個人情報保護委員会が停止命令を出しています(個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和2年7月29日)個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和4年3月23日))。
 令和4年6月20日には、新破産者マップというサイトが作られましたが、同月28日時点で、同サイトは閲覧できない状態になっています。